膝蓋腱炎に対する遠心性トレーニングと衝撃波治療の併用効果:二重盲検ランダム化比較試験
Karin M Thijs , Johannes Zwerver, Frank J G Backx, Victor Steeneken, Stephan Rayer, Petra Groenenboom, Maarten H Moen . Effectiveness of Shockwave Treatment Combined With Eccentric Training for Patellar Tendinopathy: A Double-Blinded Randomized Study. Clin J Sport Med. 2017 Mar; 27(2): 89-96.
PMID: 27347857 DOI: 10.1097/JSM.0000000000000332
No.2021-13
執筆担当: 県立広島大学 岡村 和典
掲載:2021年5月1日
【論文の概要】
膝蓋腱炎は、膝蓋腱付着部の痛みとこれに伴う身体機能障害を主訴とするスポーツ障害である。膝蓋腱炎は膝伸展機構の過度な使用によって発症し、しばしば難治性であり慢性化する。近年、膝蓋腱炎の治療において、大腿四頭筋の遠心性トレーニングや体外衝撃波治療の有効性が報告されている。しかし、これらの治療方法を併用した場合の効果は十分に検証されていない。本研究では、膝蓋腱炎の診断を受けたレクリエーションレベルのアスリート52名をランダムに遠心性トレーニング+体外衝撃波治療群(ESWT群)と遠心性トレーニング+Sham体外衝撃波治療群(Sham ESWT群)に割当て、膝蓋腱炎に対する遠心性トレーニングと衝撃波治療の併用効果を検証した。遠心性トレーニングの治療プロトコルは、両群とも25°の傾斜台を用いた下降局面のみの片脚スクワットを、毎日15回×3セット×2回、これを12週間継続することとした。これに加え、ESWT群は収束型体外衝撃波治療(0.2mJ/mm2)を、Sham ESWT群は同様の機器を使用したSham衝撃波治療(0.03mJ/mm2)をいずれも1週間おきに3回実施した。なお治療期間中、疼痛がNRS4を超えない限りはスポーツ活動の実施が許可された。治療開始後6週、12週、24週の時点で質問紙(Victorian Institute of Sport Assessment-Patella:VISA-P)を用いて疼痛と活動レベルを評価した。VISA-Pの得点は0点(最大の痛みと活動制限)~100点(無痛と最大の活動)までであり、高い点数ほど症状が軽いことを意味する。24週時点の評価において、ESWT群のVISA-Pは54.5±15.4点から70.9±17.7点へ、Sham ESWT群のVISA-Pは58.9±14.6点から78.2±15.8点へとそれぞれ改善し、時間要因に主効果を認めた。また両群とも約70%の対象が症状の改善を報告した。一方、群要因(ESWT群 vs Sham ESWT群)に主効果は認められなかった。
【解説】
膝蓋腱炎の治療として、大腿四頭筋の遠心性トレーニングが有効とされている1)。本研究は遠心性トレーニングに体外衝撃波治療を組み合わせることで、治療効果がさらに増すことを期待して行われたが、併用効果は認められなかった。膝蓋腱炎に対する衝撃波治療の効果について、VISA-Pスコアが比較的高い(軽症な)症例では効果が認めらにくい傾向がある2)。そのため、より重症な膝蓋腱炎症例を対象とした研究デザインで、衝撃波治療と遠心性トレーニングの併用効果を再度検証する必要があると考える。
【引用・参考文献】
1) Jonsson P, Alfredson H. Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper's knee: a prospective randomised study. Br J Sports Med. 2005; 39(11): 847-50.
2) Mani-Babu S, Morrissey D, Waugh C, et al. The effectiveness of extracorporeal shock wave therapy in lower limb tendinopathy: a systematic review. Am J Sports Med. 2015; 43(3): 752-61.
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