糖尿病性足病変における低強度陰極刺激の血管新生効果:ランダム化比較試験
Mohammad Reza Asadi , Giti Torkaman , Mehdi Hedayati , Mohammad Reza Mohajeri-Tehrani , Mousa Ahmadi , Roghieh Fathi Gohardani . Angiogenic effects of low-intensity cathodal direct current on ischemic diabetic foot ulcers: A randomized controlled trial.
Dirabetes Res Clin Pract. 2017 127:147-155.
PMID: 28371685 DOI: 10.1016/j.diabres.2017.03.012
No.2021-21
執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子
掲載:2021年8月2日
【論文の概要】
創傷治癒には血管新生が必要不可欠であり、VEGFやNO、HIF-1αなどのサイトカインにより調整される。糖尿病性の潰瘍ではこれらの因子が低下していることから、血管新生が阻害されている可能性がある。糖尿病性足病変(diabetic foot ulcer: DFU)に対する電気刺激が各種サイトカイン産生に与える影響を解析した。2cm2以上のDFUを有する2型糖尿病患者を対象に直流電流刺激(感覚閾値程度、1時間、3回/週)を4週間行った。陰極は創付近に設置し、陽極は陰極から20cm離れた部位に設置した。創面積および浸出液中のサイトカインとNOを測定した。VEGFおよびHIF-1α産生は電気刺激群で有意に増加したが、NOに差は認められなかった。また、電気刺激群の方が創治癒率は有意に高かった。電気刺激によりHIF-1α産生が上昇したことでVEGF発現が上昇、DFUの創治癒が促進された可能性がある。
【解説】
DFUは創感染や骨髄炎が生じると切断が必要となることもある。近位の切断患者の5年生存率は約50%という報告1)もあり、切断に至る前に治癒させなければならない。電気刺激は褥瘡などの難治性潰瘍の治療手段として用いられており、メタアナリシスでもその有効性は示されている2)。電気刺激の治療メカニズムについては線維芽細胞や表皮細胞を用いた実験で明らかにされてきてはいるが、滲出液中のサイトカイン産生についてはいまだ十分に論じられていない。本研究ではサイトカインの産生細胞までは不明であるが、DFUに対する電気刺激の治療効果解明の一助となるだろう。一方で、実際に血管新生が促進されているかどうかは臨床研究では解明できないため、今後動物実験などでの検証が必要になると思われる。
【引用・参考文献】
1) Ammendola M., Sacco R., Butrico L., et al. The care of transmetatarsal amputation in diabetic foot gangrene. Int Wound J., 2017;14(1):9-15.
2) Chen A., Chen ZY., Liu WH., et al. Electric Stimulation as an Effective Adjunctive Therapy for Diabetic Foot Ulcer: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Adv Skin Wound Care. 2020;33(11):608-612.
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