Immediate effect of mechanical lumbar traction in patients with chronic low back pain: A crossover, repeated measures, randomized controlled trial
Hideki Tanabe , Masami Akai , Tokuhide Doi , Sadao Arai , Keiji Fujino , Kunihiko Hayashi
J Orthop Sci. 2021 Nov;26(6):953-961.
PMID: 33785233 DOI: 10.1016/j.jos.2020.09.018
No.2023-01
執筆担当: 福井 直樹 和歌山リハビリテーション専門職大学
掲載:2023年2月28日
【論文の概要】
腰痛(LBP)の有病率は、政府の統計によると、健康問題の中で最も高い1)。LBPに対する機械的腰椎牽引は非特異的腰痛症に有効でないと結論づけている2)。しかし、腰部牽引は多くの国々でLBP患者に対する治療法として広く受け入れられ使用されている 3) 。本論文は、最近開発された牽引装置を用いて慢性腰痛(CLBP)に対する腰椎牽引の有効性を検討する多施設共同無作為化比較試験(RCT)を実施している。対象者は3 ヶ月以上持続する非特異的な CLBP で整形外科を受診した 20~64 歳の成人。介入プロトコルは間欠的牽引のみ(ITO)群と振動を伴う間欠的牽引(ITV)群の2群からなるクロスオーバーデザインを1週間設定した。介入に際し患者はA群(ITV→ITOの順)とB群(ITO→ITVの順)のいずれかに無作為に割り付けられた。ITVは10 分間のトラクションに振動機能を付加したもの。30秒間の牽引と5秒間の懸垂のサイクルを繰り返した。牽引の負荷は体重の40%とした。振動は周波数0.1Hz、振幅は負荷荷重の30%で付加した。ITOは30秒間の牽引と5秒間の懸垂のサイクルを繰り返しながら、10分間牽引した。牽引の負荷は体重の40%とした。評価タイミングは介入前、介入後の各期2 回ずつ測定した。痛みと生活の質(QOL)は日本腰痛評価質問票(JLEQ)で評価し、患者自身にJLEQの記入を依頼した。統計解析はJLEQスコアの経時的変化を反復測定用の一般化線形モデル(GLM)を用いて推定・分析した。統計解析は、SPSS ver. 23.0および SAS 9.4を用いた。結果、A群ITV→ITOに49名、B群ITO→ITVに46名が割付られた。ベースライン時のJLEQ得点の母集団平均値に関して、統計的に有意な差はなかった(p=0.998)。クロスオーバーの比較としてSAS の GLM 手法を用いて 1 期と 2 期間のキャリーオーバー効果を計算したが、計算結果は p = 0.527 であり、有意ではなかった。JLEQスコアの変化と2つの牽引モードの効果の違いについて線形混合モデルを用いて比較した。JLEQスコアの推定限界平均値の差は-1.75(p=0.001)であり、ITVモードはITOモードよりも有意に良好な改善効果を示した。両者の平均値の差の95%CIは-2.69から-0.80であった。
【解説】
JLEQスコアの経時的変化の差は、従来の牽引治療と比較して、振動力を追加した治療で有意な改善を示している。本論文は、CLBPに対する腰椎牽引の即効性を検討する多施設共同クロスオーバー無作為化臨床試験であった。その結果、振動を追加した腰部牽引は、従来の一定ストレッチによる腰部牽引よりも有効であることがJLEQにより示された。振動を加えた牽引力は、体性感覚入力系に強い刺激を与える可能性があると推測される。本論文は、ヒトにおける牽引療法の有効性を証明し、今後、振動の最も効果的な条件についてさらなる研究が期待される。
【引用・参考文献】
1). Statistics and Information Department, Minister's Secretariat, Ministry of Health, Labour, and Welfare:Graphical review of Japanese household, from comprehensive survey of living conditions.http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h25.pdf (2013), Accessed 29th Jan 2020
2). A. Delitto, S.Z. George, L. van Dillen, J.M. Whitman, G.A. Sowa, P. Shekelle, T.R. Denninger, J.J. Godges:Low back pain - clinical practice guidelines linked to the international classification of functioning, disability, and health from the orthopaedic section of the American physical therapy association.J Orthop Sports Phys Ther, 42 (4) (2012 Apr), pp. A1-A57
3). T.J. Madson, J.H. Hollman:Lumbar traction for managing low back pain: a survey of physical therapists in the United States.J Orthop Sports Phys Ther, 45 (8) (2015 Aug), pp. 586-595
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