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脊髄の非侵襲的神経調節による麻痺後の下部尿路機能の回復

Non-invasive Neuromodulation of Spinal Cord Restores Lower Urinary Tract Function After Paralysis

Parag N. Gad1,2, Evgeniy Kreydin, Hui Zhong, Kyle Latack and V. Reggie Edgerton

Frontiers in Neuroscience. June 2018. Volume 12 Article 432.

PMID: 30008661 PMCID: PMC6034097 DOI: 10.3389/fnins.2018.00432


No.2023-01

執筆担当: 社会医療法人スミヤ角谷リハビリテーション病院 中前 匡揮

掲載:2023年1月31日


【論文の概要】

脊髄損傷(SCI)後の下部尿路(LUT)機能障害はSCI患者に普遍的であり、患者の健康とQOLに大きな影響を与える。本研究では、非侵襲的な神経調節技術である経皮的脊髄刺激によるLUT機能増強(TESSLA)が、LUT機能に関与する脊髄回路を再活性化し、SCI患者の膀胱および尿道括約筋機能を正常化できることを立証する。対象はT11以上のSCIで、間欠式カテーテルを使用している7人(男性4人、女性3人)。被験者は全員SCIを有してから少なくとも1年以上経過している者だった。電気刺激には、独自の非侵襲性経皮的電気脊髄刺激装置(NeuroRecovery Technologies, Inc.)が用いられた。電極貼付部位はT11-T12とL1-L2の棘突起間。陰極に直径2.0cmの円形ゲル、陽極に5.0 × 10.0 cm2の長方形電極が貼付された。周波数は1Hzまたは30Hzで実施された。刺激強度は耐容可能な最大値とし、1日3時間実施された。結果、1Hz刺激の場合排尿効率(VE)の改善、流量の増加、残量減少、起立筋と括約筋の連携改善が見られた。排尿効率は26.99 ± 15.41 から 50.80 ± 5.25 %に増加した(P < 0.05, n = 7)。一方、30Hz刺激の場合では、蓄尿時の起立筋過活動の減少、すなわち膀胱容量の増加、排尿時の起立筋-括約筋の協調性の向上(n=5、P<0.05)がみられた。膀胱容量は170.54 ± 15.86ml から 252.59 ± 18.91ml に増加した(P< 0.05、n = 7)。


【解説】

SCI後のLUT機能障害は健康とQOLに大きな影響を与える。本研究は慢性期の間欠式カテーテルを使用しているT11以上のSCI患者7名を対象としている。介入方法として、非侵襲的な神経調節技術である経皮的脊髄刺激によるLUT機能増強(TESSLA)を1日3時間実施。結果、LUT機能に関与する脊髄回路を再活性化したと報告している。近年、SCI患者の難治性尿失禁に対して仙骨表面への電気刺激を実施することで、神経因性膀胱や不安定性膀胱などを対象に失禁回数が改善された報告がある1)。また、脳卒中患者においても腰仙髄領域への神経筋電気刺激療法が尿失禁を改善させた2)との報告もある。特にSCI後の排尿障害はほとんどの患者において付きまとう問題であると言われている3)。本研究ではTESSLAという特殊な治療機器を用いているが、その他の経皮的な電気刺激機器においても障害された排尿機能に何らかの改善が得られる可能性があるのではないか。今後の研究の発展が排尿障害患者へのリハビリテーションの一助になると考える。



【引用・参考文献】

1) Effects and indications of sacral surface therapeutic electrical stimulation in refractory urinary incontinence - Clinical Rehabilitation 2004; 18: 899-/907

2) Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation therapy in patients with urinary incontinence after stroke. Medicine (Baltimore). 2018 Dec; 97(52).

3) 脊髄損傷における排尿障害の診療ガイドライン 2011年 page8

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