Cardiac and Peripheral Autonomic Responses to Orthostatic Stress During Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation in Healthy Subjects
Eleonora Tobaldini, Edgar Toschi-Dias, Liliane Appratto de Souza , Karina Rabello Casali , Marco Vicenzi, Giulia Sandrone, Chiara Cogliati, Maria Teresa La Rovere, Gian Domenico Pinna, Nicola Montano. J Clin Med. 2019 Apr 11;8(4):496.
PMID: 30979068 PMCID: PMC6517949 DOI: 10.3390/jcm8040496
No.2022-05
執筆担当:和歌山リハビリテーション専門職大学 福井 直樹
掲載:2022年5月30日
【論文の概要】
交感神経系と副交感神経系は自律神経系の主枝であり、恒常性維持のために内蔵機能を制御している1)。この自律神経の失調は高血圧や心不全など多くの疾患の発症・進行に関連し、特に心血管疾患の予後を左右する因子であることが明らかになっている2-3)。ヒトの迷走神経の耳介枝は、迷走神経求心性の第一中枢である孤束核(NTS)や、脳幹や前脳の他の迷走神経投射部に投射されていることが報告されている4)。Krausらは機能的磁気共鳴を用いた神経画像研究により、大脳辺縁系構造や脳幹などの自律神経調節経路のBOLD信号が、左前耳道の電気刺激(taVNS)により減少することを観察している5)。本研究は健常者において、taVNSがHRを低下させ、起立性ストレスに対する自律神経系の反応性を変化させるかどうか無作為化クロスオーバー研究デザインで検証した。対象は平均年齢27.4歳の若い健常者13名とし、介入1日目にtaVNSを行い、24時間後をコントロール期とした。評価はECG、胸部ベルトを介した呼吸信号、安静時および受動的起立運動時の非侵襲的な拍動性動脈血圧とした。taVNSは非侵襲的なTENS装置(NEMOS)を用いて、外耳の左耳介に経皮的電気神経刺激を行った。パラメーターはパルス幅200ms、パルス周波数25Hzの電流を1〜6mAの感覚閾値のレベルで実施した6)。解析はR-R間隔の連続する2つのピーク間の間隔から得られた心拍変動(HRV)、収縮期動脈圧変動(SAPV)の周波数領域解析を行った。統計解析は、Lèvene検定およびShapiro-Wilk検定を用いて、それぞれ分布の均一性および正規性を評価した後、電気刺激の種類間の差をStudent's t-testで検定し、p<0.05の確率値を統計的に有意とした。結果、taVNSによってHRが有意に低下したがスペクトル分解時の低周波成分と高周波成分の相対的な寄与率においては有意な差はみられなかった。一方、R-R間隔では、心臓の交感神経の変調の指標となる無変動パターンの頻度が有意に減少した。
【解説】
本研究は若年健常者に対してtaVNSを実施し、ベースラインと比較して①HRを低下させる、②安静時に心臓および末梢の交感神経調節を低下させる、③起立性変化に対する交感神経系血管運動調節の反応性を高めることを明らかにした。迷走神経を非侵襲的に新しい方略で刺激・調節することができることは非常に興味深い。①HRの低下は副交感神経の迷走神経活動が耳介刺激によって直接誘発された結果であると考えられる。しかし、taVNSがどのようなメカニズムでHRを低下させるのか不明である。②taVNSが交感神経の心臓副交感神経変調を減少させる、③taVNSが交感神経系の血管運動調節を減少させる。この現象によってtaVNSが心拍数と収縮期動脈圧の変動の減少を起こす可能性が示唆される。最近の研究では、耳の他の場所と比較して、耳介を刺激するとNTSの活性化が有意に強くなることも示されている7)。経皮的迷走神経刺激はHRを低下させ、心臓および末梢の自律神経調節に影響を与え、交感神経による調節が心臓と血管に向けられ、遠心性線維だけでなく、求心性線維も活性化させることで全身を調節する可能性がある。
【引用・参考文献】
1) Montano, N.; Tobaldini, E.; Porta, A. The Autonomic Nervous System. In Stress Challenges and Immunity in Space: From Mechanisms to Monitoring and Preventive Strategies; Chouker, A., Ed.; Springer:Berlin/Heidelberg, Germany, 2012.
2) Mancia, G.; Grassi, G. The Autonomic Nervous System and Hypertension. Circ. Res. 2014, 114, 1804–1814.
3) La Rovere, M.T.; Pinna, G.D.; Maestri, R.; Mortara, A.; Capomolla, S.; Febo, O.; Ferrari, R.; Franchini, M.;Gnemmi, M.; Opasich, C.; et al. Short-term heart rate variability strongly predicts sudden cardiac death in chronic heart failure patients. Circulation 2003, 107, 565–570.
4) Frangos, E.; Ellrich, J.; Komisaruk, B.R. Non-invasive Access to the Vagus Nerve Central Projections via Electrical Stimulation of the External Ear: FMRI Evidence in Humans. Brain Stimul. 2015, 8, 624–636.
5) Kraus, T.; Kiess, O.; Hösl, K.; Terekhin, P.; Kornhuber, J.; Förster, C.CNSBOLDfMRI E ects of Sham-Controlled Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation in the Left Outer Auditory Canal—A Pilot Study. Brain Stimul.2013, 6, 798–804.
6) Kreuzer, P.M.M.; Landgrebe, M.; Husser, O.; Resch, M.; Schecklmann, M.; Geisreiter, F.; Poeppl, T.B.;Prasser, S.J.; Hajak, G.; Langguth, B. Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation: Retrospective Assessment of Cardiac Safety in a Pilot Study. Front. Psychol. 2012, 3, 70.
7) Yakunina, N.; Kim, S.S.; Nam, E.C. Optimization of Transcutaneous Vagus Nerve Stimulation Using Functional MRI. Neuromodulation 2017, 20, 290–300.
Comments