不動による筋肉の線維化に対するベルト型電気刺激の効果
Yuichiro Honda , Natsumi Tanaka , Yasuhiro Kajiwara , Yasutaka Kondo , Hideki Kataoka , Junya Sakamoto , Ryuji Akimoto , Atsushi Nawata , Minoru Okita . Effect of belt electrode-skeletal muscle electrical stimulation on immobilization-induced muscle fibrosis.
PLoS One. 2021 May 13; 16(5): e0244120.
PMID: 33983958 PMCID: PMC8118259 DOI: 10.1371/journal.pone.0244120
No.2021-15
執筆担当: 関西福祉科学大学 植村 弥希子
掲載:2021年5月31日
【論文の概要】
不動による拘縮はコラーゲン線維が過剰に発現することで筋が線維化を起こし、生じる。電気刺激の筋委縮予防効果は報告されているが、疼痛や電極の大きさに限界があるなどの問題がある。今回、ベルト型電気刺激装置を用いて筋の線維化に対する効果を検証した。本研究には8週齢のWistar系ラットを用い、コントロール群、不動群、不動+電気群に分け、電気群にはベルト型電気刺激にて下肢に周波数50Hz、強度4.7mA、on: offは2秒:6秒の刺激を20分間、1日2回、週6回の頻度で2週間行った。結果、不動群と比べ関節可動域の低下は予防され、コントロール群と比べtypeⅠ、Ⅱ線維ともに減少したが、不動群と比べtypeⅠ線維の減少は予防された。拘縮を引き起こす線維化促進因子の発現は不動群と比べ減少し、筋内のコラーゲン量も減少したが、筋委縮マーカーは不動群と不動+電気群で差はみられなかった。ベルト型電気刺激により筋タンパク質分解系の亢進を抑制することはできなかったが、筋の線維化が引き起こす拘縮を予防することが明らかとなった。
【解説】
不動による関節拘縮は筋肉や関節包のコラーゲン量が増加することで生じると言われている1), 2)。電気刺激による筋委縮予防効果を検証しているメタアナリシス3)もあり、その予防効果はすでに知られているが、不動による関節拘縮に対する効果とそのメカニズムについては明らかにされていない。また、筋収縮を引き起こす刺激強度は痛みや不快感、筋秘湯などの副作用も生じる可能性がある。今回新たに使用されたベルト型電気刺激装置は上記の問題を軽減させ、より幅広い範囲の刺激が可能であると言われている。本研究によりベルト型電気刺激装置が筋肉内のコラーゲン量を軽減させ関節可動域制限を予防する効果が明らかとなったが、荷重を伴う運動療法の実施が困難な患者の拘縮予防に有用となる可能性が示唆された。一方で筋委縮マーカーに差はなかったため、今後周波数や強度を変更し、筋委縮にも効果のある刺激条件が明らかになればさらに臨床的意義が深まると考えられる。
【引用・参考文献】
1) Honda Y, Tanaka M, Tanaka N, et al, Relationship between extensibility and collagen expression in immobilized rat skeletal muscle. Muscle Nerve. 2018;68:672-678.
2) Sasabe R, Sakamoto J, Goto K, et al. Effects of joint immobilization on changes in myofibroblasts and collagen in the rat knee contracture model. J Orthop Res. 2017;35:1998-2006.
3) Thomaz SR, Cipriano G, Formiga MF, et al. Effect of electrical stimulation on muscle atrophy and spasticity in patients with spinal cord injury - a systematic review with meta-analysis. Spinal Cord. 2019;54:258-266.
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